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CEOブログ -SPECIAL INTERVIEW 02 前編 – 無邪気に発想し、行動に移す。自分で限界を決めないように

川島製作所が上質を追求する企業となるために、各界の一流の方々から学びを得る対談企画・第二弾のゲストは、初代「G-SHOCK」の開発者・伊部菊雄氏(カシオ計算機株式会社 シニアフェロー)です。
1983年の初代モデル発売以降、累計出荷個数1億3千万個以上、世界中の人々に愛されている「G-SHOCK」。その生みの親である伊部さんに、未来のモノづくり人間たちに向けたアドバイスとエール、そして、“発明”のために大切な視点についてお話を伺いました。

世の中の「モノ」は、必ず誰かの役に立つように考えて作られている

伊部:今回、対談の機会をいただいて、伊早坂社長の本(『そこまでやるか、をつぎつぎと。』)を拝読しました。商品というのはただそれだけでなく、パッケージも含めてトータルで商品なのだなと再認識しました。
私は海外出張が多いものですから、海外の商品に触れることも多くて、それらと比べると日本の包装技術は誇れるものですね。

伊早坂:海外のお客様ですと「Package」という言葉通り、包まれていたらよいという方もいらっしゃいますが、日本語の「包装」は包み、装うと書くだけに、品質と美しさ両面を兼ね備えなければなりません。日本独特の文化だと思います。

伊部:キャラメルの包装1粒1粒にしても、なんでこんなにきれいにできているんだろうか、これまで当たり前のように手にしていたものを、もう一度、見直すきっかけになりました。

伊早坂:まさに当社の包装の原点が、キャラメル包装です。当社は今年創業108年を迎えるのですが、初代は神輿の飾り物を作ることから商売を始めて、戦後、キャラメル包装に業態を変えました。それ以降、諸先輩方があらゆるモノを「包む」技術にこだわり続け、進化させて、いまがあります。

伊部:そうなんですね。

伊早坂:そしていま、次の100年に向けて、当社の製品価値やブランド力をさらに高めていくにはどうすればいいかを模索しています。
その答えのひとつに「上質なものの提供」があります。何も上質だからといって高級であるだけではなく、受け取る側から見て、作り手のこだわりが見えるもの、想いに共感できるもの、言い換えると「持っていてワクワクするもの、持ちたい!と思えるもの」こそが上質ではないかと考えているんです。
その点、まさに「G-SHOCK」は、それを体現しています。

伊部:光栄です。

伊早坂:私は、「G-SHOCK」は日本が誇れるモノづくりの「ヒーロー」だとずっと思っていて、1983年の初代モデル発売から常に心にひっかかっている存在です。
そんな「G-SHOCK」の生みの親の伊部さんに、モノづくりへのこだわりや、ヒントを頂戴したいと本日、お時間をいただきました。

伊部:ありがとうございます。こうして期待されたり、褒められると照れてしまいますね(笑)。

伊早坂:伊部さんの「G-SHOCK」の開発秘話やお取組みは、書籍『G-SHOCKをつくった男のシンプルなルール』やインタビューなどを拝見し存じ上げているのですが、いまはどのような活動をしていらっしゃるのですか?

伊部:「G-SHOCK」を世界へ広げる活動、自社や他社のエンジニアの方などにアイデアの発想法や、モチベーションの上げ方などのノウハウを伝えるセミナー、小学生らに発明のヒントを与える活動を行っています。コロナの影響があって、以前より対外的に活動できていないのですが、この3つが主な仕事です。残りの時間で新しいテーマを考えています。

伊早坂:世界へのPR活動というと、「SHOCK THE WORLD(注1)」のことですね。すべての現場で各国の母国語でプレゼンテーションすると聞いて、ものすごい取り組みだと感動しています。その他のセミナーや講演では、どんなことを伝えているんですか?

伊部:ビジネスパーソン向けには、会社の戦略があるなかで、いちエンジニアがどんな考えでモノづくりや毎日の仕事に取り組めばよいかということだったり、「会社→部→課→係→自分」と整理したときに、「いま、一人ひとりがやることってなんだろう?」と考えを整理してもらえるような内容を伝えています。
小学生たちにはもっと伸びやかで「モノづくり」の根本というか、原点、楽しさを伝えています。この活動では、むしろこちらの方が学びを得ています。

伊早坂:たとえば、どんなことですか?

伊部:広報と一緒に活動している発明教室で、小学生に最終的に発明のアイデアスケッチを書いてもらうのですが、当然いきなりアイデアなんて出ないわけです。
そのときに、私が後押しする言葉として、「モノは必ず誰かの役に立つように考えてつくられている」。では、「みんなが朝起きて、学校に来るまでにいろんなモノを見てきたと思うけど、何かあった? それがどんな役に立っているだろう?」と質問してみるんです。
そうすると、あれよあれよと、アイデアが出てきます。
いつの時代も「最近の若い子たちはダメ」と言われがちですが、それは刺激や環境を与えられていない大人の側、会社でいえば上司の側が悪いのかもしれないと気づかせてもらえました。

無邪気な発想ができるような環境をつくる

伊早坂:当社としても他人事ではない話です。私自身、元々開発者ですし、現在も社内のプロジェクトメンバーとやりとりする機会が多々ありますが、モノづくりの生みの苦しみを理解しているにもかかわらず、つい「もっとすごいアイデアはないか?」と発想の飛躍を求めているかもしれません。期待の裏返しでもあるのですが。

伊部:大人になるとどうしても頭が凝り固まりがちですからね。その点、小学生はすごいですよ。「ランドセルはどんな役に立つ?」と聞くと、私なら「教科書が入ります」なんて答えるところ、「枕がないときの代わりになります」とか。
時計なら、腕のバンドを食べることができて、また生えてくる。災害時に役立つだろうなんていう発想も。大人の想像をはるかに超えたものが出る。無限のアイデアに驚かされます。

伊早坂:とても自由ですね。私もよく社員に言うんです。「可能性って無限大だよ」と。できる・できないを決めているのは自分次第でしかなくて。ならば、できる可能性に挑戦した方がいいじゃないかと背中を押しているんです。
とくに長く同じ仕事をしていると、いままで通りでいいとか、言われてないからいいかと、考えが固まってきますよね。これって、一番つまらないことだよと伝えています。
私自身も、伊部さんの発明教室の小学生のように頭をやわらかくしないといけないですし、従業員が自由闊達な意見を交換できる場をつくらないとならないですね。

まずは自分の思いを行動に移してみる。頭でっかちを打破する

伊部:これからモノづくりを担う若い人たちに伝えたいことは、「まず、行動してみる」ということです。いまの若い人たちは総じて優秀です。勉強が大好きって言うんですよ。これはすごくいいこと。でもそこで終わってしまうのが欠点ですね。
頭がいいからこそ考えすぎてしまうのと、世の中を達観してしまってチャレンジをしないという共通点があるようです。小学生のときは誰もが無邪気で自由だったのが、なぜか頭でっかちになってしまう。
以前、ある高校に授業にいった時に、生徒さんから「何かをする前にすべて答えが見える。だから行動に移せないんです」と相談を受けました。衝撃的な一言で、こうした考えがいまの若い人たちに共通しているのかとも思いました。

伊早坂:頭がいいだけに、考えすぎたり、未来のストーリーが見えるように感じる。そのときに損得も想像して、失敗するくらいならチャレンジしない方が無難かなと思うのかもしれませんね。

伊部:そうなんです。モノづくりもひいては人生も、良くも悪くも自分の思い通りにいかないものなのに、勝手に答えを決めつけて、歩みを止めているような気がします。
さきほどの生徒さんに伝えたのも「一度でいいから試してごらん。結果は、想像通りになるかもしれないし、ならないかもしれない。その違いこそおもしろいんだよ」と。
頭でっかちになって行動しないことで、自ら可能性をつぶしてしまっていることがもどかしいですし、実にもったいない。

伊早坂:私も常々、「失敗を恐れて何もしないことこそが最大の失敗」と言っていて、モノづくりは正解のない、チャレンジの世界なんですよね。
書籍にも「失敗大いに結構。チャレンジする人を応援するのが川島製作所の流儀」と記しました。

伊部:素晴らしいし、うらやましいですね。書籍を読んだときにも感じましたが、働いている方は幸せでしょうね。私も働いてみたいと思ったくらいですから(笑)。
私もモノづくり人間ですから、日本の産業がサービス業に流れていく潮流の中、モノづくりを大事にしている経営者がいらっしゃることをとても心強く思います。

伊早坂:私もこれからやることは山積みですが、まずは従業員やお客様を幸せにして、ワクワクさせていきたいところです。
そして、「モノづくり日本」のために、もっとチャレンジしていこうと思いを新たにしました。

伊部:この記事を読んでくださった方が、「ちょっとやってみるか」とチャレンジしてくれたら嬉しいですね。これだけ行動に慎重な人たちが多いのだから、モノづくりで何かを成し遂げたいという夢があるなら、いますぐまず行動してみることです。
川島製作所さんから、次の「ヒーロー」となる製品や、モノづくりの匠が輩出されたらこんなにうれしいことはありません。

【後編に続く】
後編では、「G-SHOCK」のように世界中に愛される製品のつくり方、モチベーションを維持するための方法、川島製作所と伊部さんの取り組みの共通点、モノづくりを志す方へ伝えたいメッセージについて触れます。

伊部菊雄(いべきくお)
1952年生まれ。上智大学理工学部を卒業後、カシオ計算機に入社。1981年「落としても壊れない丈夫な時計」というたった1行の企画書からスタートし、2年の開発期間を経て、1983年に初代「G-SHOCK」を世に送り出した。
1996年、フルメタルで耐衝撃構造を実現した大人のG-SHOCK「MR-G」をプロジェクトリーダーとして企画商品化。2004年にはカシオのブランドステージアップを目的に電波ソーラーを搭載したフルメタルのモデル「OCEANUS」を企画商品化。2008年からは、「G-SHOCK」の開発ストーリーを世界に伝える「SHOCK THE WORLD」をスタート。現在は次世代のエンジニア育成の勉強会やセミナー、日本全国の小学校での「発明教室」などを通じて、自身の想いやノウハウを伝えている。
カシオ計算機株式会社HP:https://www.casio.co.jp/
G-SHOCK公式ウェブサイト:https://gshock.casio.com/jp/

注1:SHOCK THE WORLD
世界中に「G-SHOCK」の魅力を伝えるために、伊部氏の「G-SHOCK」開発物語を含む、ファンづくりの為のプロモーションイベント。これまで訪れた国は30数カ国に及ぶ。すべて現地の言葉でプレゼンテーションを行っている。必ず最後に伝える言葉が「Never Never Never Give Up(決して、決して、決してあきらめない)」というメッセージ。

 

撮影/山田崇博
文/クロスメディア・マーケティング

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