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CEOブログ -SPECIAL INTERVIEW 04 前編-創作とモノづくりの共通点。「伝統と革新」を実現するファクター-

川島製作所が上質な価値を追求する企業となるために、各界の一流の方々から学びを得る対談企画・第四弾のゲストは、墨絵・陶墨画アーティストの西元祐貴氏です。

伝統的美術様式である「墨絵」を現代アートへと昇華させ、世界中から評価されている西元祐貴氏に、創作へのこだわりとモチベーションの源泉、プロとしての仕事論についてお話を伺いました。川島製作所のモノづくりとも共通する点と、真似るべき点の双方について示唆を得ることができました。

包装機械と墨絵に共通する「引き算の美学」

伊早坂:テレビ番組で初めて西元さんの作品を見たときに、ゾクゾクッと鳥肌が立って、西元さんの美意識や墨絵を現代アートへ昇華した経緯、プロフェッショナル論などをかねてよりお聞きしたいと願っていました。こうしてお目にかかれて光栄です。

西元:ありがとうございます。『そこまでやるか、をつぎつぎと。』を読ませていただきました。僕も伊早坂さんにお聞きしたいことがあって、ぜひご質問させてください。

伊早坂:本をお読みいただいたんですか。ありがとうございます。あらためて当社のことを簡潔にご説明すると、当社は包装機械メーカーとして創業から111年、私が代表を引き継いで6年目になります。先人たちの努力や開拓精神があっていまに至るのですが、単純に歴史や技術を受け継いでいくだけでなく、次なる100年に向けた変化や革新を起こしたいと考えています。

まさに西元さんは墨絵という伝統絵画技法に付加価値を与えて、新しい世界を切り開いていらっしゃる。その取り組みやお考えから、当社に活かせるものを学ばせてもらいたいです。

西元:恐れ入ります。じつは新しい墨絵のジャンルを開拓しようというよりも、元々はアスリートの躍動感を絵にしたいというのが創作の動機です。油絵も水彩も鉛筆絵も一通り経験した上で、最も「躍動感」を表現できるのが墨絵だったんです。

またアスリートのようなライブ感にもこだわりがあって、描き直しのきかない一発勝負の世界に魅力を感じて始めたのがきっかけです。

もし新しい世界を切り開いたとおっしゃっていただけるのならば、表現したいことを突き詰めた結果なのかもしれません。といっても、まだまだ僕も発展途上の身です。

伊早坂:ライブペインティングを見ていても一息で描かれますし、紙の“白”と墨の“黒”だけの表現なので、墨絵はごまかしのきかない世界ですよね。当社のモノづくりの精神にも「引き算の美学」というものがあって、不要なものを取り除いていった先にごまかしのきかない製品が生み出される、そうした本質にこだわった製品づくりをし続けたいと思っています。この「引き算の美学」に対する共通点があるのかどうかも、お聞きしてみたかったことです。

西元:まさに同じことを僕も質問したいと思っていました。墨絵でいうところの「引き算」は、「余白」なんです。描くところよりも描かないところを意識して構図をつくります。構図をつくるまではひたすらデッサンをして、筆を入れるときは無心です。そのときは描くというより、筆を置いていくという感覚。リズムをとても大切にしています。

伊早坂:やはりそうなんですか。西元さんの作品をみていて、白と黒の配分、光と影のバランスなどをものすごく意識されているなと感じていました。龍の墨絵にしても事細かく描き込んではいないですものね。

西元:そうなんです。さらに技術的なことを言うと、角度やパーツごとに光と影をバラバラに描いて、見る人の目の錯覚を起こすような仕掛けもしています。なので、同じ絵でも見る人によってさまざまな解釈が生まれます。龍のヒゲも黒い箇所がヒゲと思う方もいれば、白い箇所をそう感じる方もいらっしゃいます。

ある展示会では白黒の2色なのに「あの赤い作品が良かった」とおっしゃる方もいて、その方には絵から赤いパワーが感じられたのだと思います。

伊早坂:余白があることで想像が掻き立てられるんでしょうね。

西元:まさにそれを意図しています。解釈や評価は見る方々に委ねていいんです。

毎日のこだわりと準備が理想の創作につながる 

伊早坂:筆を入れる前にかなりの準備を行っているとおっしゃいましたが、普段心がけている習慣やルーティンはありますか? 

西元:自宅のある福岡とアトリエのある福井、個展などが行われる各都市を行き来しているのですが、アトリエ以外では一切、筆を持ちません。自宅やカフェや移動先などでipad片手にデッサンを繰り返して構想を練ります。準備を周到に行ってからようやく筆を持って、和紙に向き合います。それも集中力はもって2時間くらいです。

伊早坂:ライブペインティングの際は、10、20分くらいのパフォーマンスですが、このときもかなりのエネルギーを使いそうですね。

西元:そうですね。ライブでは2時間どころか、15分も集中すればへとへとです。創作は体力勝負のところもあるので、普段からジムに通ったり、食事も1日1食ですませています。空腹のときのほうが集中できますし。

伊早坂:ストイックですね。普段の生活から美意識があって、率直に言って「かっこいい」です。私も常々、社員らにひとりの人間としてかっこよく生きよう、そしてかっこいい仕事をしよう、それがかっこいい会社になると伝えています。

かっこいいって言葉だけ聞くととても単純に聞こえますが、日々の絶え間ない努力が必要で、シンプルが故に体言するのは難しいものです。西元さんの生き方からもまた、引き算の美学を感じます。

西元:同業者よりもアスリートやミュージシャンに友人が多いのですが、みな総じてストイックですし、彼らから刺激を受けています。創作においては体型に歪みが出たときは作品にも歪みが出てきます。それだけに普段の生活に気をつけています。

プロとアマチュアの境目はない。すべては作品が物語る

伊早坂:西元さんの象徴的なモチーフである龍は、福岡市のお蕎麦屋さんからのご依頼だったそうですね。 

西元:2011年にプロを目指して、多くの人に絵を見てもらいたくて市内の公園でベニヤ板に張り付けた紙でライブペインティングをしたのがきっかけでした。リクエストを受けて描いたのもこのときが初めてのことだったですし、お金をいただいて描いたのも初めてで、それがきっかけで仕事の依頼も増えました。

伊早坂:いま振り返ってみていかがですか? 「プロになったな」という実感は?

西元:描き始めたころは、みなに認められたいという気持ちが強かったのですが、30を過ぎてからはそうした力みはなくなりました。いまではプロもアマチュアもなく、作ったものがすべてだと思います。感じたことや思ったことを懸命に表現することに尽きます。

かといって自己満足だけで描いているわけでなく、誰かのために描いているんだと思います。そもそも地球に僕ひとりしか生きていないなら果たして絵を描いているのか……。古代人もきっと何かを伝えたいから甲骨文字や絵を壁面に描いたのだろうなと想像します。

伊早坂:創作の根底にあるモチベーションは、自らの表現欲求だけでなく、誰かに喜んでもらったり、感動してもらったりと、周囲の人のためにもあるのでしょうね。この気持ちは私たちのモノづくりと同じです。

西元:いまでこそ、真っ白な手すきの3メートルの和紙に墨絵を描いていますが、当初、越前和紙の職人さんからすると、「和紙は本来真っ白なものではないし、そんな大きな和紙はつくれない」と一顧だにされなかったんです。それでもなんとかお願いして絵を描いたら、職人さんたちから大変喜んでもらえて表現の幅が広がりました。

伊早坂:まさに守るべき伝統に新たな付加価値をつけたお話です。当社も包装機械や包装文化に新たな付加価値をつけなければなりません。

それはおそらく西元さんのように一人ひとりがこだわり、想いを持って取り組むことで生まれるのでしょうね。とても刺激を受けました。まだお聞きしたいことがたくさんあります。引き続きよろしくお願いいたします。

【後編に続く】

後編では、創作やモノづくりで大切な「見切る目」「継続の力」「包装についての未来」について語り合います。

 

西元祐貴(にしもとゆうき)

1988年鹿児島県出身。

世界的な注目を集める、日本を代表する墨絵、陶墨画アーティスト。伝統的な技法に捕われず、大胆さと繊細さを持ち合わせたタッチで「躍動感」「力強さ」を追求した作品を展開。龍や侍などの古典的なモチーフから、スポーツ選手やミュージシャンなどの斬新なモチーフも描く。

イベントやTV番組では度々「ライブペイント」を披露しており、香港のクリスティーズオークションでは描いた直後の墨絵が85,000香港ドル (約130万円) で落札された。迫力の墨絵が瞬く間に描かれる様子は、世界中で見る者を魅了し、圧倒する。

2015年には、新たに西元のタッチによる新しい現代アート「陶墨画」を公開。陶土の板に釉薬で描き、高温で焼き上げることによって、躍動感ほとばしるタッチが千年褪せない生命を得る──墨絵の技法と自然のコラボレーション作品は様々な層のファンやコレクターから高い支持を得た。

2016年2月には制作の拠点となる福井県に、日本国内では初めてとなる「西元祐貴 陶墨画ギャラリー」がオープンした。壁画描き下ろしの壁画や、VRによる作品鑑賞ができるギャラリーとして多くのファンが訪れている。

さらに、陶板だからこそできる新たな技法にも挑んだ2020年の個展「破壊と創造」では、新型コロナの影響により入場者数がごくわずかに制限される中で大半の作品に買い手が付き、アートとしての可能性を大きく広げて見せた。 

このほか、ヨーロッパ、アメリカ、中国など海外での個展やライブパフォーマンス、CGや動画、様々な分野とのコラボレーションなど、型に嵌らない活動スタイルで世界を舞台に活躍中。

公式サイト

https://www.yuki-nishimoto.com/

撮影/山田崇博

文/クロスメディア・マーケティング

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