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環境対応包材の最新取り組み状況と商品ブランドを高める最先端包材の実力

川島製作所 ソリューション戦略室・阿部賢吉室長に聞く

SDGs・カーボンニュートラル対策事情と最新環境技術が切り拓く未来

消費者意識やマーケット環境の変化が今、大きな潮流として世界中に広がりを見せています。人々の環境意識はここ数年で急激な高まりを見せ、SDGsとして結実しました。エネルギーコストの上昇、差別化しにくい競争環境など、企業経営は外部環境から大きなプレッシャーを受けています。
どうすればこの劇的な変化を迎えた時代に、持続可能な成長を続けていけるのでしょうか?
川島製作所で包装機のこれからを考える包装ソリューション戦略室、阿部賢吉室長が、SDGsとカーボンニュートラルに対する川島製作所の対応や最新環境技術の進展、そして「食」のものづくり現場が抱える課題や未来を切り拓く、革新的な包装技術についてご説明します。

株式会社川島製作所 ソリューション戦略室 室長 阿部賢吉

環境対応包材の最新取り組み状況と商品ブランドを高める最先端包材の実力

脱プラスチックへの道

>SDGsの広がりは、食品を包装する包装素材(包材)にまで影響力を強めています。飲食店やコンビニエンスストア等でテイクアウトをした際のストローやスプーン、フォークなどを紙や木の素材に変更する取り組みが、ニュースなどで取り上げられることも増えました。包材にも、脱プラスチックの流れが生まれているんですよね。

阿部:阿部:2020年にスターバックスコーヒーが、日本国内の全店舗でアイスドリンクのストローを紙へと切り替えたニュースを覚えている人もいるのではないでしょうか。コンビニ大手各社も、プラスチック製のストローを順次廃止し、生分解性素材や紙製のストローに切り替えています。22年4月に施行された、プラスチックごみの削減やリサイクル強化に向けた『プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラスチック新法)』の中で、使い捨てプラスチックを2030年までに累積で25%削減するという目標が提示され、企業の脱・減プラスチックへの取り組みは加速しています。  同様に、食品を包装する包装素材(包材)に関しても、変革の波が訪れています。これまで、包装機で包装する包材のほとんどがプラスチック製でした。プラスチックは、引っ張ると伸びる性質があり、熱を加えれば形を変えたり貼り合わせたりが容易で、機械との相性がとても良い素材です。密閉性も高いため、食品の包装にはうってつけだったといえます。ただ、SDGsの観点から、今後は石油由来プラスチック製品を減らしていかなければなりません。それは食品包装に関しても例外ではない。包材を、石油由来プラスチックから、それ以外へと変えていく必要があるのです。そこで今注目されているのが、紙やバイオプラスチックなどの植物由来の素材です。

>石油由来ではない素材の代表としてまずイメージするのは「紙」ですが、「バイオプラスチック」というのはどのようなものなのでしょうか。

阿部:バイオプラスチックというのは生物由来の資源を原料としたもののことです。サトウキビやトウモロコシ、ジャガイモのでんぷんなどから生成できます。サトウキビというのは砂糖の原料ですが、この砂糖をつくる過程から出る廃蜜からプラスチックをつくることができるんです。「植物由来」と聞くと、自然に分解される素材というイメージを持ちますが、バイオプラスチックのすべてが、土の中にいる微生物によって分解される性質、つまり「生分解性」であるわけではありません。バイオプラスチックのなかにも、生分解性のものと、植物由来ではあるけれど、自然に分解されない非生分解性の2種類があります。

>近年、廃棄されたプラスチックの細かな破片などが海を汚染しているという問題が大きく取り上げられ、これまで以上に「脱・減プラスチック」の声が大きくなってきています。生分解性のあるバイオプラスチックが今後活躍できるフィールドは大きいように思えます。

阿部:そうですね。ただ、課題もたくさんあります。生分解性バイオプラスチックのほとんどは、土壌の微生物によって分解されるものなので、そのまま海に流した場合、分解されることなく海上を漂うことになりかねません。かといって、もし現状のプラスチックすべてを生分解性に置き換えたとして、それだけ大量のプラスチックをどこに埋めるのかといった問題も生じます。さらに、従来のものよりも強度がかなり弱く破れやすいうえに、熱に弱い。通常、袋を接着する際には、加熱することが多いのですが、そうするとシートがドロドロに溶けてしまって機械に張り付いてしまうなど、包装機が扱う素材としては、扱いがとても難しいものなのです。 その点、非生分解性のバイオマスプラスチックは、石油由来のプラスチック素材と見た目も性質もほとんど変わりませんから、包装機での扱いは容易です。

>非生分解性のバイオマスプラスチックへ変更するメリットはどこにあるのでしょうか。

阿部:植物由来であっても自然の中で分解されない場合、今懸念されている海洋汚染を減らすことは難しいかもしれません。でも、 “カーボンニュートラル”に貢献することはできます。石油由来であっても植物由来であっても、非生分解性のプラスチックの場合、燃やすことで廃棄物処理が行われ、その過程で温室効果ガスの代表格である二酸化炭素が排出されます。ただ、植物由来の場合、原料となる植物は、成長する過程で二酸化炭素を吸収していますから、燃やした際に出る二酸化炭素と、吸収する二酸化炭素が同じ量であれば、新たに排出してしまう二酸化炭素量は「差し引きゼロ」と考えられる——。これが「カーボンニュートラル」の考え方です。

>非生分解性のバイオマスプラスチックでも、二酸化炭素の排出量を減らすことに貢献しているという点で、環境に配慮しているということなんですね。

阿部:こちらの問題点は、従来のプラスチックをすべて代替できるほど原料が生産されていないことです。現状では、スーパーやコンビニなどで使っているレジ袋のためにその素材がほとんど使われてしまっていて、包材の素材として手に入れることが難しいという現状があります。また、見た目は従来のプラスチックと見分けがつきづらいため、「植物由来のものに変えた」というインパクトがありません。  消費者に訴求しやすいと言う点で、エンドユーザーに直に接することになる販売店の店長やバイヤーなどは、紙素材を好む傾向があります。紙はそれだけで、「環境に配慮している」イメージがありますから。

プラスチックから紙へ-素材の性質の違いをクリアした最新包装機

>プラスチック素材のパッケージが“紙”に変更されれば、一目で環境に配慮していることをアピールできますね。実際、意識して見てみると、購入するお菓子の袋など、紙素材のものが増えている気がします。

阿部:2019年にネスレがキットカットの包装を紙に変えたことをきっかけに、業界として、「プラスチック素材から紙へ」という流れができてきたようです。  ただ、包装機として包材に紙を使うのは、技術的にとても難しいんです。というのも、従来のプラスチックは引っ張れば伸びる性質を持ちますが、紙は引っ張っても伸びません。それどころか裂けてしまう。そのため、従来は力を入れて引っ張っても大丈夫だったものが、紙では引っ張る際に微妙な力加減が必要となります。また、上からの突き刺しに弱いのも問題です。例えば袋状にした包材に上から食品を入れて閉じる縦ピロー機では、食品を上から落として入れる衝撃で包材に穴があいたり破れたりしてしまうんです。  また、プラスチックと紙素材とで大きな差があるのが、素材のコシの強さです。縦ピロー包装機では、上から食品を入れて上辺を接着します。この時、食品が下まできちんと入らずに途中で止まってしまったりすると、上辺の接着の際に中身を噛み込んでしまいます。そうならないために、最新の縦ピロー包装機では、少し袋をたわませてマチを広げ、上から入れた食品が下に沈み込むような仕組みをつくりました。ところが、紙の場合、プラスチック素材よりもコシがあるため、同じように袋をたわませようとしても、自然にはたわんでくれません。試行錯誤した結果、入り口を広げて下に押さえつけることで袋をたわませ、食品を下の方に沈ませることができるようになりました。これは、川島製作所独自の方法として特許も取得しています。

>コシの強い紙だからこそ生まれたやり方なんですね。紙での包装は機密性がなく、食品の保存には向いていないと聞いたことがあります。

阿部:紙の包材は気密性に欠け、遮光性も弱いため、日持ちさせたい場合には対策が必要です。包材を提供するさまざまなメーカーが、紙の弱い部分を補うための方法を研究しています。  現状では、紙だけでは、耐水性、耐油性、バリア性など、さまざまな機能が足りないため、機能性のある別の素材を付加しています。例えば、紙コップや紙皿など、表面がツルツルになっているものがあります。あれは、紙にプラスチック素材を薄く張り付けて水を通さないようにしているんです。でも、そんなふうに紙をコーティングすると、紙とコーティング部分を分離することが難しく、リサイクルしづらくなります。カーボンオフセットという視点でみれば、プラスチックから紙素材へ変更するだけでもいいのですが、そこからもう1歩踏み込んで、最終的にリサイクル可能なように、機能性を付加し、なおかつ付加した層が分離できる “ノリ”の開発が進められているんです。

>紙の場合、プラスチックと比べると、強度も弱くなりますね。

阿部:上からものを入れると、底が破れてしまう可能性がありますから、現在は、穴が空かないように紙にフィルムを張っている状態です。紙素材の場合、全体の50%以上が紙素材であればリサイクルマークである紙マークをつけることができます。ただ、そのためには、全体の紙の量を増やす必要が出てきて、紙が厚くなるという別の問題が生じてしまいます。  また、そうしたフィルムを貼らなくても突き刺しに対応できる包装機もすでに誕生しています。ただ、従来のものよりもゆっくりしたペースで機械を動かす必要があるので、これまでと同じペースでも穴があかないような、さらなる改良が必要だと思っています。

リサイクルできる包材の未来

>紙やバイオプラスチックなど、植物由来の素材のほかにも、SDGsの観点から「モノマテリアル(単一素材)」に注目が集まっていると聞きました。

阿部:現状、食品をパックしているフィルムというのは、接着する素材、光を遮る素材、熱に強い素材など、さまざまな機能を持つ4枚から5枚の層構造になっています。それぞれ別の機能が付加されたものが合わさって1枚のフィルムができているのです。この、機能が重なり合ったフィルムは、機能も違えば素材も違います。そして、残念ながら廃棄する際にそれぞれを分別することはできません。リサイクルするとなれば、素材が違うものは別々に集める必要がありますから、機能も素材も違うものが合わさっている現状の包材は、リサイクルできません。今、牛乳パックやペットボトルなどに関してリサイクルが進んでいるのは、それがモノマテリアル(単一素材)だからです。

>モノマテリアルで活用できるプラスチック素材は、ポリプロピレン(PP)とポリエチレン(PE)の2種類あると聞きました。

阿部:ペットボトルはPE単体でつくられているため、リサイクルできます。ただ、PPもPEも透明で光を通しやすいため、食品の包装に使うとなると、中身の劣化を防ぐためにも光を通さない工夫が必要となります。  また、包材として活用するのであれば、その素材はシール性が必要です。ところが、PP、PEともに熱に弱く、生分解性プラスチックと同様、ヒーターで熱した場合、接着箇所以外の場所も熱せられ、ベタベタと包装機にくっついてしまいます。解決方法としては、超音波を使って接着する超音波シール方式が有効なのではないかと今研究をすすめています。 『プラスチック資源循環促進法(プラ新法)』には、「2030年までに容器包装の6割をリユース・リサイクルすること」というマイルストーンも盛り込まれています。そのため、今後、リユース・リサイクルしやすいモノマテリアル素材の包材を使いたいという要望は増えていくと考えられます。今はまだ、リサイクルというとペットボトル、ビン、カン、牛乳パックなどがメインですが、リユース・リサイクルを進めることが国の方針として打ち出されていますから、近い将来、使用したモノマテリアル素材の包材を回収し、リサイクルするインフラ設備も整っていくと思われます。そのため、先行してモノマテリアル素材への移行が始まりつつあるのです。  脱・減プラスチック対策として、現状では、バイオプラスチック、紙、そしてリユース・リサイクル可能なモノマテリアルと、新たな包材の可能性が示されています。それぞれメリットとデメリットがあり、さまざまなアプローチが同時に行われている状態ですから、将来これらすべてが活用されるようになるのか、それとも淘汰され、紙やモノマテリアルへと集約されるのかは未知数です。川島製作所としては、どんな包材であっても対応できるように、それぞれのメリット、デメリットを考慮した包装機の開発を進めているところです。そう遠くない未来、現在課題となっているいくつかの問題を解決できる包装機を世に出していくことをお約束します。

(続く)

公開済みの記事

Vol.01:SDGs・カーボンニュートラルへの取り組み「待ったなし」、いかに消費電力を抑えるか

今後の掲載予定

Vol.03:物流まで変える! 環境時代に最適化する包装環境技術とは
Vol:04:ものづくりを変える包装技術の未来〜 あなたの未来はこう変わる!


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■Company Profile
株式会社 川島製作所
所在地 埼玉県草加市谷塚上町434
TEL 048-925-1573
創業 1912年
資本金 1億円
従業員数 247名(子会社含)
https://www.kawashima-pack.co.jp/

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